アーユルヴェーダとは?
アーユルヴェーダとは、サンスクリット語のアーユス(Ayus/生命)とヴェーダ(Veda/科学、真理)を組み合わせたもので、「生命科学」を意味します。
古代インドに起源をもつ、人間まるごとをとらえた医学ですが、病気の治療だけでなく、心と体と精神の調和によってもたらされる幸福な人生を生きるための健康増進法として体系化されています。
食事法(医食同源)や健康法(ヨガ・瞑想)など、毎日の暮らしに取り入れられる実践的な生活の知恵から、幸福な人生、不幸な人生とは何かを追求する哲学や、生命そのものを科学するという概念を含む医哲学体系でもあるのです。
3つの「ドーシャ」とは?
アーユルヴェーダでは、「ドーシャ」と呼ばれる自然界の五元素から構成されるエネルギーが心身の機能を調整するというのが基本理念です。ドーシャには3つの要素「ヴァータ(風+空)」「ピッタ(火+水)」「カパ(水+地)」があり、その生来的なバランスによって一人ひとりの体質がきまり、体質に応じたバランスの状態が健康で、バランスが崩れた状態になると病気になると考えられています。
食べ物は自然界の五元素からなり、体内のドーシャのバランスに影響します。自分の体質に合った食べ物を適切に取れば、それが薬にもなり、滋養にもなると考えるのです。
またオイルマッサージはドーシャを整えるだけでなく、体内の浄化・デトックスも行います。
(上馬場先生から、ドーシャチェックの設問をもらって掲載する)
食養生
古代のアーユルヴェーダ文献には、「食事が正しいときには、薬は要らないが、食事が正しくないときにも、薬は要らない」と記されています。薬が要らないのは、食事が正しくないときには、いくら良い薬を飲んでも効果がないからです。
日常の食事から、十分な栄養とエネルギーを得られれば、身体の新陳代謝やエネルギー代謝がスムーズに行われ、私たちが生まれつき持っている、自然治癒力や免疫力がしっかりと働いてくれます。
■アグニ(消化機能)を考える
またアーユルヴェーダでは、体の消化機能を「火(アグニ)」として重要視しています。たとえば一日の中で消化力の高い時間帯は10~14時なので、昼食をきちんと取り、アグニが低くなる夕食時は軽くするなど、消化力に合わせて食事を考えます。
火(アグニ)が順調であれば、食べ物からオージャス(活力素)が生成されますが、アグニが弱ければ食べ物が消化しきれず、体に毒素(アーマ)が蓄積されます。それが増えると体内の通路をふさぎ、ドーシャの体内での流通を乱して、老化を早めたり、体調不良や病気を引き起こすことにもなります。オージャスを増やして、毒素(アーマ)を増やさないよう、消化力を考慮した食生活を送りましょう。
■白湯で毒素(アーマ)のデトックス
消化力アップと、毒素(アーマ)のデトックスとしてお勧めは、朝起きたら、一杯の白湯を飲むことです。冷たい水では内臓が温まりません。50℃前後が適温です。沸騰したら10~15分くらい沸かしてから冷ましましょう。1日に700~800mlを目安に、食事中にもちょびちょびと、それ以外の時間帯も含めて、ゆっくり時間をかけて飲みましょう。ハチミツや塩レモン、ライムやミントなどを、季節を考慮しながら加えてアレンジしてもいいでしょう。
■食事のルール
アーユルヴェーダには、消化機能を考えた食べ方の作法があります。
①食事は、空腹を感じてから取る
②腹七分目で食べる
③食べることに集中し、感謝の心でおいしく食べる
④リラックスした環境で、正しい姿勢で食べる
⑤食事中やその前後に、水を大量に飲まない
ボディワーク的養生法
中国医学の気功に相当するものは、アーユルヴェーダではヨーガです。ヨーガには、ポーズや呼吸法だけでなく、瞑想法も含まれますが、この「ポーズ・呼吸法・瞑想」は、気功における「調身・調息・調心」にあたるものです。
ヨーガを通じて、自分と向き合う時間をもつことで、さまざまな気づきを体験し、豊かで幸せな人生を拓く一助となるでしょう。
■ヨーガ
・ポーズ(アーサナ)
アーサナは、古典ヨーガではあくまでも瞑想のための安定した、心地よい座り方を示したものですが、現代に広く普及している「ハタ・ヨーガ」では、生理的・身体的な修行を軸とする100種ほどのさまざまなポーズがあります。
・呼吸法(ブラーナーヤーマ)
呼吸法はプラーナーヤーマと呼ばれ、「プラーナ」とは「気息」のことで、「アーヤーマ」とは「動かないようにコントロールする」ことを意味します。つまり、ゆっくりと呼吸することで「気息」を制御し、思考を止めるという状態に導くことができると考えられています。また熟練した呼吸法によって脳血流を増加させ、脳の活性化が促されるとされています。
・瞑想(ディヤーナ)
瞑想は、何かに集中するのではなく、内と外が一体となった静寂を体感するものです。時間も空間もなく、無念無想の静寂の中で、「今、ここにある」ことの至福感に満たされる方法です。
オイルマッサージ
アーユルヴェーダでは、オイルを治療に用います。ちなみに1週間のオイルマッサージを連続して行えば、体調がすこぶるよくなるほど効果的です。
オイルマッサージは、皮膚の下の組織に刺激を与えることによって新陳代謝を活性化させ、老廃物や不純物の排出を促します。また免疫作用を高めるためにも働きます。
■ごま油のさまざまな効果
マッサージオイルは、季節や体質(ドーシャ)によって異なりますが、一般的にはごま油がよく使われます。ごま油は抗酸化物質を含んでおり、酸化に強い油です。栄養価も高く、ビタミンA、B、Eの他、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、セレンなどのミネラルも含みます。主成分はリノール酸とオレイン酸で、脳や神経系にも効果的と言われています。
定期的に使用することで、ストレスや緊張を緩和し、老化防止や疲労回復、ホルモンバランスを整えたり、肌荒れの改善、睡眠の質の向上にも役立ちます。また免疫にも作用しますので、感染症に対する抵抗力が高まることも実証されています。
治療に用いる場合のアーユルヴェーダオイルは、それぞれのドーシャの乱れに応じたハーブを調合したものが使用されます。
・ヴァータの乱れには、アーモンド、ヒマシ、マハナラヤン、アシュワガンダ、バラーなど
・ピッタの乱れには、ココナッツ、ブラフミー、ブリンガラなど
・カパの乱れには、バッチャー、フラックスシードなど
※注意点
ごま油は「ピッタ」を増やす作用があるため、ピッタ体質の方や、ピッタが過剰になっている場合には使用しないようにしましょう。ごま油の代わりに、ココナッツオイルやオリーブオイルがおすすめです。
また、ごま油で発疹が出るような場合はアレルギーが疑われますので、使用しないようにしましょう。
■セルフマッサージの実践
マッサージといっても、揉んだり押したりするというより、オイルを浸透させることが目的ですから、どなたでも簡単に実践できます。
まず、マッサージの前に「キュアリング」というオイルの加熱処理をしましょう。
お鍋にごま油を入れて100度に熱したら、すぐに火を止め、火からおろし、冷ましてからガラスの遮光瓶にいれて保存します。このキュアリングをすることで、ごま油が浄化されて、より一層皮膚に浸透しやすくなるといわれています。
なお使用の前には、お湯を沸かし、火を止めた鍋にオイルが入った瓶を一分ほど湯煎して、温めてから用いましょう。オイルが温かいことで、リラックス感が増します。
◉ごま油うがいの効果
アーユルヴェーダでは、ごま油のうがいによる多くの効果を示唆しています。
うがいには白ごま油か、太白ごま油を温めたものを用います。抗酸化作用が強く、美容と健康に良いとされています。
効果1:歯茎を強くし、炎症を抑え、虫歯や歯槽膿漏の予防効果も。オイルを指につけて歯茎マッサージもおすすめ。
効果2:舌苔を除去し、味覚を良くする。水では溶けない毒素のデトックスに効果あり。口臭予防にも。
効果3:声が美しくなる。ヴァータ(風)の過剰で生じるのどの渇きや嗄れに、潤いを与えることで発声が良くなる。
効果4:頬の筋肉が鍛えられて、ほうれい線が改善される。上下左右に膨らませながらうがいをすることで、抗酸化成分と筋肉運動による肌のハリが期待できる。
◉アーユルヴェーダの簡易マッサージのポイント
アーユルヴェーダの簡易マッサージのポイントは、頭、耳、手と足裏です。
マッサージによって、血流やリンパの流れが良くなり、体内の毒素の排出も促すことができます。また、肌へのやさしいタッチが緊張をゆるめ、リラックス効果を得られるとともに、疲労による痛みを緩和します。
頭や足の親指のマッサージは、目の疲れを癒し、視力の改善にも役立ちます。
眠りに不安を感じている場合は、頭と手足と耳の三点をマッサージすることで、緊張や動揺を鎮め、良い眠りをもたらします。
◉耳
耳介(じかい)には交感神経の求心繊維があります。外や上に引っ張ることで、全身の血流が良くなります。また耳の穴の周りと耳珠(じじゅ)には、副交感神経の求心繊維があります。ここを圧迫することで胃腸の動きが変わり、食欲をコントロールできることもあります。
耳の前後や内側、耳たぶを、つまんだり、引っ張ったりして約2分ほど気持ちよくマッサージしましょう。体の代謝を促進します。
◉手足
手のひらや足の裏には全身のツボがあると言われるほど、大事なポイントです。手のひらから指、足の裏から指先までを、強めにマッサージします。
足首から膝まで、膝から足の付け根までを、それぞれ数回なで上げてマッサージします。
◉頭
頭にあるマルマ(急所)は、全身のマルマの3割が存在していますので、適度な刺激によってドーシャのバランスを整え、脳や目、全身の活性につながります。オイルを使わなくても大丈夫ですが、オイルを使った場合は、オイルは流さずそのままシャンプーします。
◉顔
顔のリンパと静脈の流れを促し、コラーゲンの再生にも効果的だといわれています。
指や手のひらでやさしくさすり、外に広げるようにマッサージすることで、潤いのある肌と、張りのある豊かな表情が育まれます。